2018年4月25日水曜日

「億男」が3倍楽しめる基礎知識

シェアハウスの本棚に川村元気著「億男」があったので読んだ
それなりに楽しめたけど、知っておいたほうがいい落語があるので
ネタバレにならない程度に紹介

---あらすじ---
普通に働き、結婚して娘をもうけごく普通に幸せな家庭を持つ一男
弟の借金3000万円を肩代わりしてから家庭崩壊の危機に
福引券でもらった宝くじが3億円になってしまった!
あまりの額に一男はネットで調べると
”宝くじ当選者の悲惨な人生”というサイトを見てしまい
不安になり、大学落研の親友”九十九”に会いに行く
---

親友の九十九と主人公の一男は落研なんだけど
ストーリーの最後に落語の”芝浜”が出てきます
知っとかないと面白さが減るので知っておきましょう

作品の中で出てくる落語は”寿限無”と”死神”と”芝浜”
特に”芝浜”が重要なので知らない人は一度聞くべし!


アニメ”昭和元禄落語心中”から
約9分、最低限これだけは知っておいて欲しい
声優の山寺宏一さんスゴイわ
こんなに落語できるんだ


時間ある人向け
今は亡き立川談志師匠の
十八番”芝浜”

ウッチャンナンチャンの南原さんも芝浜やってますね
芸能人は話術を学ぶという点で落語を演る人が多いのかしら
月亭方正とか桂三度とかアンガールスの田中とか岡田斗司夫とか
話がそれた


これも”昭和元禄落語心中”から”死神”
蝋燭を継ぎ足すと寿命が伸びる
失敗すると死んでしまうというオチ
全部じゃないけど聞いておこう
作中で菊比古から八代目八雲を襲名するのだけれど
老成した石田彰さんの演技も飛び抜けてる


こっちは時間ある人向け
六代目三遊亭円楽”死神”
落語の中で桂歌丸師匠をイジるのズルいぞ








ココからは多少ネタバレありです
目次のタイトルが

男の世界
十九の金
和子の愛
瀬の賭
住の罪
佐子の欲
男の未来

と数字の桁で順に上がってます

順にキャラ紹介
一男:主人公。借金背負ったり宝くじ当選で億万長者になったりお金に翻弄される。
九十九:一男の親友。大学の落研で知り合う。ベンチャーを立ち上げ大手に売却。100億を超える大金持ち。
十和子:九十九のベンチャーの初期メンバー、広報担当。男を愛してるのか、その裏にあるお金を愛してるのかで悩み抜いた末、うだつのあがらない男と結婚。押し入れに10億隠してる。
百瀬:九十九ベンチャーの初期メンバー、技術担当。お金をギャンブルで使い切ろうとするが勝ってしまう。お金を捨てたがってるけど1円を大事に拾う。お金のせいで寄ってくる人を信用できなくなってる。
千住:九十九ベンチャー初期メンバー、営業担当。売却益を守るため「ミリオネア・ニューワールド」という怪しい宗教法人をやっている。
万佐子:一男の妻。娘のまどかを連れて別居中。一男とは図書館で出会う。まどかのバレエレッスンに通うのに賛成し、金銭的に大変だから止めさせようとする一男と対立する。
まどかのバレエは明日を生きるために必要な”欲”と考えてる。

最後の”億男”は億万長者になった人のことなんだけど一男のことですね




---感想---
金持ちしか出てこない。でも、それぞれがお金のことで悩んでる。
18年10月に公開される映画は、お金と愛と家族にスポットを当てたヒューマンドラマにしちゃうんだろうけど。
著者は東宝の「電車男」「告白」「悪人」「モテキ」「おおかみこどもの雨と雪」の川村元気。こういう作品がヒットする=こういう考えがマジョリティ側になってる、と思う。
ココらへんを堺にお金の考え方が一段落してるということは、新しい考え方、つまり仮想通貨とかレイトマジョリティには理解できない物が出てきてるわけでお金にパラダイムシフトが起きてる。
信仰の具現化は宗教。信用の具現化はお金。九十九は一男を信じた。九十九がモロッコでお金の天国と地獄を見る旅に出て、戻ってきた場所は”人を信じること”だった。
お金という貨幣経済の先にあるのは、信じてくれる人がいるかどうかが重要になる世界になっていうのではなかろうか?
俗な言い方だと信者がいるか。ファンがいるか。ネットのオンオフに限らず信じてくれる人がいるだけで救われる。九十九は一男がいることで100%になれて救われてる。
ラストは一男に家族が取り戻せるような、明るい方向で閉められてるけど、離婚を体験した私には取り戻せるか分からないや。



(5月29日追記)
 どうも著者の川村元気氏は「億男」を執筆するにあたり、お金持ちにインタビューして回ったとか。ということは、この本に出てくるお金持ちキャラクターには元になったモデルが居る。私は金欠なので理解しにくい事に悩んでる人もいるのだなぁ、と。
 人が社会性のある生き物として円滑に生きるために作り出した「宗教(神)」と「お金」。産業革命前は宗教は今よりも強かったが、誰でも働けばお金が手に入るようになってからは、神に祈ることよりも働いて賃金を得ることのほうが上になった。
 ネットの発達により効率化が進んだ昨今、働いてもお金にならなくなってきた。お金の天国と地獄を見てきた九十九が、一男を「信じる」ことにした、っていうのはひょっとするとポスト資本主義のことなんじゃないかと愚考したり。




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